3. 2次元CADについて

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2次元CADを考えてみましょう。

パソコン画面上に2次元の投影図を描くためのツールで、図形を描く考え方は手描き作業とまったく同じです。手描きと同様に平面上に線の集合体として図形が存在しているだけですので、CADソフトが形状を認識しているわけではありません。

CADは、従来からある手書き製図の手法をそのままコンピュータで支援する形式となっています。従って作図に関しても、機械用など一般的なCADでは主に投影法、中でも正面図/平面図/側面図で構成される「第三角法」が基本です。

最近は2次元CADと3次元CADが複合したソフトが主流を占めており、2次元データに厚みを与えて3次元化もワンタッチ操作で変換しています。
2次元CADと3次元CADを操作性だけで比較すると、2次元CADの方が3次元CADよりも優れています。この特性を生かして次のように利用できます。
詳細設計の初期段階では、試行錯誤による変更が多いため操作性の良い2次元CADを用いて、与えられたスペース内でのレイアウト検討が効率的に行えます。
複数のメンバーで同一の製品を分担して設計する場合、互いの構造(計画図)を重ね合わせることも容易にできるため、隣接するユニットの接合方法などを早期に決定することが可能です。

2次元CADを使った場合、ディスプレイの中は無限の平面であり、配置を気にせず図形を描き、後から必要な位置に移動することができます。また、線を「描く」「消す」の作業も簡単に実行できます。
しかし、CADは描いた線をデジタルデータ化しているのです。ディスプレイには、図面の原点があることを認識しましょう。その原点からグリッド等を貼って作業をすると、その描いた線は整頓された数値になります。また、2次元データをIges:Dxfファイルに変換して加工データとして使用する際にスムースな受け渡しが可能となります。

2次元図面の重要性

将来、3次元CADのモデルデータの中に寸法公差や幾何公差の情報が表現できると考えられますが、現状では設計したサイズや形状などを2次元の部品図として紙の図面に表現するしか手段はないのです。
設計者の皆さんは、3次元CADを使って設計することで、“エンジニアリングな設計”をしていると勘違いしているかもしれません。CADで計画図を作成した後には、部品を製作するための部品図を作成する必要があります。
ベテランのトレーサーや外注設計者が作図を引き受けてくれる場合は、設計者の意思を確認しなくても、どこが基準か、どんな寸法公差が必要かを勝手に判断して部品図を描いてくる場合があります。しかし若手のトレーサーや新入社員に作図を依頼すると、そんなことは考えもせず、端から順番に寸法線を記入されてしまいます。

現状のように、日本国内で加工する分には、基準があいまいであったり公差が不適切であってもそれなりの寸法精度で出来上がるため、すぐに不具合は発見されません。ところが、同じ図面を海外で加工するとさまざまな不具合が発生して収拾がつかなくなるのです。
このように製図作業を分担するシステムが会社内にあると、設計担当者は製図の重要性を見失いおろそかに扱ってしまいます。部品図を作成すること、つまり機械製図は技術者の間では次のように思われがちです。
部品に寸法線を記入するだけの単調作業
創造性のない仕事
寸法を記入するだけなら、誰がやっても同じ
でも、どんなに素晴らしいアイデアを創造し、CADで計画図を描いても、そこには魂が入っていなければ、単なる「画面上のオブジェクト(物体)」でしかありません。
トレーサーや設計外注者が、計画図を理解して図面を描いてくれると期待してはいけないのです。寸法基準や公差を明確に指示できなければ、設計者といえません。
製図は機械設計者が行う設計作業の中の「最後のとりで」といえます。つまり、設計者自身が生み出した部品1つ1つに魂を入れる作業なのです。

魂を入れる作業とは、次の5つの項目を部品図として指示することです

1. 寸法基準(機能基準・加工基準・計測基準)を決める・・・・基準の取り方で、全く別の製品になることに注意しましょう。
2. 寸法公差・幾何公差を記入する・・・・・・・・累積公差の検討手法は後ほど説明します。
3. 表面性状(表面粗さ)を記入する・・・・・・・摩擦の検討手法は後ほど説明します。
4. 材料を指定する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・材料の組成の検討
5. 表面処理(めっきや熱処理など)を指定する・・熱処理による材質の変化を検討

これらの5項目を設計者として意思を入れて製図することで、製品の信頼性向上やコスト低減につながるのです。
そして設計者が意思を入れて製図した部品図は、第三者が図面を見たとき、誰でも同じように判断できるものでなければいけません。そのために製図の作法を決めて守ることが大切なのです。
設計者は、部品図を出して部品が出来上がるのを待つだけですが、設計者が出図した図面を後工程の技術者が見て作業をするということを意識しなければいけません。
設計者が部品図に魂を入れても必ずしも完全であるとはいえません。製図の作法に関するミスや勘違い、検討漏れなどのリスクが潜んでいます。
そのため、自己チェックに加え、第三者による図面チェックが必要です。図面をチェックして問題ないと証明するのが、照査や承認欄のサインです。しかし、このチェックをする上位者には、寸法漏れさえなければよいと勘違いしている人も多いのです。

検図とは、主に下記の視点でチェックする必要があります。

1. 部品の目的(機能):組立図を見て、寸法基準、機能基準などを把握。
2. 製図の作法:第三角法や尺度、図形の省略などJIS製図に沿ったものか確認。
3. 機能性:重要機能寸法やはめ合い部分の寸法公差と表面性状など適切か確認。
4. コスト:適切な材料、表面処理、材料の無駄などがないか確認。
5. 安全性:人が触る操作面のエッジなど、危険部位は面取りなどが処理されているか確認。
6. 環境性:禁止有害物質の使用やリサイクルのための材料表記(樹脂の場合)を忘れていないか確認。

以上のように、視点を明確にして検図する姿勢が重要です。

単に部品図を眺めているだけでは、不良の流出を防止できません。構造検証として組立図を見ながらチェックを行い、また図面変更時に検証漏れがなく確実に図面に反映されているかを確認するべきと考えます。
つまり図面とは、機能を下流工程へ伝達するための手段であり、機能を正しく反映し誤解されない内容でなければいけません。このように製図は、最終的に企業利益に反映される重要なステップであることを十分に認識しなければいけません。

機械設計は、アイデアを生み出す図解力と、品質・コストを作り込む製図力が必要です。そのうえに、失敗を繰り返さないという“経験”と技術者としての勘を働かせる“センス”が重要な要素であることも忘れてはいけません。ダーウィンの進化論では、生き残るのは <賢いからではない> <強いからでもない> 変化することができるものがそれを得るとあります。
ひとつでもいいです、昨日と違う<身の回り>を変えてみましょう。

では、実際に図面を描いてみましょう。
近年、フリーで使用させてくれるソフトがあるので紹介します。
2Dフリーソフトです。
学生諸君は、是非使ってみたら如何でしょう。
DraftSight……http://www.3ds.com/jp/products/draftsight/free-cad-software/
スチューデントモデルですが充分な機能があります。たくさんの図面を描いてみましょう!!
2次元の図面から頭脳は3次元のオブジェクトを想像する訓練をしましょう。

基本は2次元であることを忘れてはいけませんよ!!

ここで、脱線しますが。私の座右の銘です。あ・お・い・く・ま……
・・せるな!
・・ごるな!
・・ばるな!
・・さるな!
・・けるな!

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